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中高生のネット依存の現状は?
子どものインターネットやゲーム依存症を防ぐ条例制定を目指している香川県議会の検討委員会は12日、コンピューターゲームの利用時間を1日60分までとする「目安」を盛り込んだ全国初の条例案を開会中の今議会に提出する方針を決めた。可決、成立の見通し。 ※2020/3/18 可決成立。4月施行。
このニュースを見聞きされた方も多いことと思います。
ゲームだけを悪者扱いする見方には疑問を感じますが、オンラインゲームを含めた中高生のネット依存については、
厚生労働省研究班が2018年9月31日発表した
「飲酒や喫煙等の実態調査と生活習慣病予防のための減酒の効果的な介入方法の開発に関する研究」の研究成果で、
インターネット依存が疑われる中高生の数は、2012年度の調査で、推計51万人2017年度の調査で、推計93万人とされ、5年で42万人の増加、ほぼ倍増といって良い状況となっています。
調査結果から見えてくる特徴をまとめると、
●30日以内に利用した端末の種類は、スマホが最も多く、
・中学生の7割、高校生の9割が使用。
学年ごとに差はあるもののおおむね
・LINEに代表されるSNS:6~9割
・動画サイト:7~8割
・オンラインゲーム:4~5割
となっています。
但し、利用率に関しては、サービスの多様化や流行によって、その年々で大きく変化することもあり得ると考えます。
調査から年数が経過(2017年12月~2018年2月、全国の中学48校と高校55校の全校生徒を対象に調査)していますが、筆者の肌感覚では、状況は悪化こそすれ、改善はされていないように感じられます。
うちの子、ネット依存?見分け方
前述の厚生労働省研究班による中高生6万5千人弱から結果を得られた調査は、8項目のスクリーニング(適格審査)を実施しています。
これで完璧とういものではないと思いますが、ネット依存を見分ける一つの目安になるのでは?と考えましたので8項目全て掲載します。
②あなたは満足を得るために、インターネットを使う時間をだんだん長くしていかなければならないと感じていますか?
③あなたは、インターネット使用を制限したり、時間を減らしたり、完全に止めようとしたが、うまくいかなかったことがたびたびありましたか?
④インターネットの使用時間を短くしたり、完全に止めようとした時、落ち着かなかったり、不機嫌や落ち込み、またはイライラを感じましたか?
⑤あなたは、使い始めに意図したよりも長い時間インターネットを接続した状態でいますか?
⑥あなたは、インターネットのために大切な人間関係、学校のことや、部活動のことを台無しにしたり、あやうくするようなことがありましたか?
⑦あなたは、インターネットへの熱中のしすぎを隠すために、家族、学校の先生やその他の人たちに嘘をついたことがありましたか?
⑧あなたは、問題から逃げるために、または、絶望的な気持ち、罪悪感、不安、落ち込みなどといった嫌な気持ちから逃げるために、インターネットを使いますか?
この8項目のうち、3~4項目当てはまると、不適応使用者=「ネット依存予備軍」
5項目以上当てはまると、病的使用者=「ネット依存の疑い」
とされています。
ご覧頂いた皆様はいかがでしたでしょうか?お子さんはいかがでしょうか?
また、保護者の皆様は?
筆者は、50過ぎでゲームには興味がないのですが、それでも3つ当てはまりました。
ということは…
この「予備軍」の不適応使用者を含めると推計は254万人となっています。
中高生全体では約650万人ですから、実に 中高生の「7人に1人がネット依存の疑い」中高生の「2人に1人が予備軍以上」
ということになります。
一方、ゲーム依存とは?
では、このネット依存に含まれてもいるゲーム依存についてはどうでしょうか。
WHO(世界保健機関)による病気の分類で、世界的に使用されているICD(国際疾病分類)というものがあります。
2018年6月18日に公表されたICD-11(国際疾病分類 第11版)では「物質使用症(障害)群または嗜癖行動症(障害)群(Disorders due to substance use or addictive behaviours)- 嗜癖行動症(障害)群(Disorders due to addictive behaviours)」カテゴリおよび「衝動制御症群(Impulse control disorders)」において「ゲーム症(障害)(Gaming disorder)」が採用された。 一部筆者追記
ゲーム依存は、国際的には「ゲーム症(ゲーム障害)」として知られています。
嗜癖行動症(障害)(Disorders due to addictive behaviours)カテゴリは、
- 「ギャンブル症(障害)(Gambling disorder)」
- 「ゲーム症(障害)(Gaming disorder)」
- 「嗜癖行動症(障害)、他の特定される(Other specified disorders due to addictive behaviours)」
- 「嗜癖行動症(障害)、特定不能(Disorders due to addictive behaviours, unspecified)」
の4つに分類されていて、ゲーム症(障害)は、その一つ。
さらに、ゲーム症(障害)を、
- 「ゲーム症(障害)、主にオンライン(Gaming disorder, predominantly online)」
- 「ゲーム症(障害)、主にオフライン(Gaming disorder, predominantly offline)」
- 「ゲーム症(障害)、特定不能(Gaming disorder, unspecified)」
ゲーム依存の見分け方は?
それでは、どういう状態がゲーム依存=ゲーム症(ゲーム障害)といえるのでしょうか。 前述のICD-11(国際疾病分類 第11版)では、ゲーム症(障害)は、持続的または反復的なゲーム行動(「デジタルゲーム」または「ビデオゲーム」、それはオンラインすなわちインターネット上、またはオフラインかもしれない)の様式(パターン)によって特徴づけられる。 1.ゲームをすることに対する制御の障害(例:開始、頻度、強度、持続時間、終了、状況)。 2.ゲームに没頭することへの優先順位が高まり、他の生活上の利益や日常の活動よりもゲームをすることが優先される。 3.否定的な(マイナスの)結果が生じているにもかかわらず、ゲームの使用が持続、またはエスカレートする。 その行動様式は、個人的、家庭的、社会的、学業的、職業的または他の重要な機能領域において著しい障害をもたらすほど十分に重篤なものである。 ゲーム行動の様式は、持続的または一時的そして反復的かもしれない。 ゲーム行動および他の特徴は、診断するために通常少なくとも12ヶ月の間にわたって明らかである。しかし、すべての診断要件が満たされ症状が重度であれば、必要な期間は短縮するかもしれない。また、WHOのゲーム症(障害)Q&Aには、
ゲーム症(障害)が診断されるためには、その行動様式が、個人的、家庭的、社会的、学業的、職業的または他の重要な機能領域において著しい障害をもたらすほど重大でなければならず、通常少なくとも12ヶ月間にわたって明らか(にそのような状態であること)です。 ゲームに参加する人は、ゲーム活動に費やす時間、特に他の日々の活動を除外するときに、ゲームの振る舞いのパターンに起因する彼らの肉体的または心理的な健康や社会的機能の変化に注意を払う必要があります。 ※()内及び太字筆者追記一年間上記の1,2,3のような状態が断続的にでも続いた場合ゲーム依存といえるとありますが、全ての判断基準を満たしているなら、一年を待たずにゲーム依存と判断することもあり得るとされています。
ネット依存、ゲーム依存は、問題なのか?
広い意味で言えば、どんな趣味でも、それを最優先し、寝食をわすれて夢中になってしまえば「依存」と言えるかもしれません。
また、大人であれば依存性のあるものに手を出して、病的な状況になってしまうのも
「自己責任」
と言われて仕方ない部分もあるかもしれません。
問題なのは、精神的にも肉体的にも発達の途中である子どもたちが、意図せず依存状態に陥ってしまうことにある
と考えています。
初めに取り上げた厚生労働省研究班の調査結果では、実際に、
高校生の半数が「成績の低下」と「授業中の居眠り」と回答。
高校3年生の0.9%が年間30日以上の長期欠席を経験。
インターネットやオンラインゲーム、SNSなどの使い過ぎで日常生活に支障が出ているわけですから、中高生の多くがネット依存の状態にあるといえるのではないでしょうか。
また、すでに不登校状態にある中高生は調査できていないため、通学できないほど重い依存状態の中高生を含めれば、さらに多くの子どもたちが依存に苦しんでいると考えられます。
筆者は、ネット依存、ゲーム依存は、子どもたちの心身の健康を蝕む大きな問題の一つであり、早急な対策が必要と考えます。
中高生のネット依存、ゲーム依存。見分け方 まとめ
ユーチューバ―、プロゲーマーなど、一見華やかに見える新しい仕事が一部でもてはやされる時代。
子どもたちの目に、魅力的に見えるのもうなずけます。
ただ、どちらも成功している人、生計をたてられている人は、プロスポーツ選手同様ほんの一握りです。
スポーツの世界では、例えばウエイトトレーニングの「オーバーワーク」のような依存状態に陥ることは少ないですし、そもそも依存になる前に体に限界がきてしまいますので、純粋にスポーツ好きが「野球依存症」などに陥ることは、稀だと思います。
一方、ネットやゲームの依存予備軍以上の人が、中高生に限っただけでも半数に上る状況ですので、今回取り上げた、見分け方を参考にして頂き、まずは
お子さんが依存状態にないか、確認するところから
始められては如何でしょうか。
確認の結果、該当しなければとりあえずは安心ですが、スマホを使用している以上いつ依存状態に陥るかは予測できません。
特に長期休暇中は、ネットやゲームの利用時間が長くなる傾向にあると思いますので、
手遅れになる前にご家庭でも日頃からこまめにチェックして頂いたり、スマホの利用についてお子さんを交えて話し合う機会を設けて頂ければと思います。「スマホをへし折った」
「ゲームできないように壊した」
など、過激な行動にでても問題の根本的な解決にはなりません。
大切なのは、
「依存かな?」
と疑う段階で、お子さんと良く話し合って、ご家庭でルール作りをされて頂き、状況が悪化するまえに「依存の芽」を摘み取ってしまうことではないでしょうか。