安易な『共感』の危険性。漫画『夜廻り猫』を読んで考えたこと

最近、あるネットニュースで取り上げられたことをきっかけで、探してはときどき立ち読み(?)させてもらっている漫画があるんです。

深谷かほる先生の『夜廻り猫』(講談社)という短編作品

朝日新聞社が創設した『手塚治虫文化賞』で第21回短編賞(2017年4月25日発表)を受賞された作品とのこと。

(ちなみに、この年の特別賞は「こち亀」の秋元治先生が受賞されていたんですね…)

心にしみるストーリーが多いんです。

今回は『夜廻り猫』の中のある作品を読んで考えた、日々のカウンセリングを通して感じる「共感」の危険性について、語らせて頂きたいと思います。

のびのびさんの似顔絵左側用
のびさん
最後までお付き合い頂けましたら、幸いです。
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漫画『夜廻り猫』を読んで考えたこと

共感を示すハートのペイント画像

『夜廻り猫』って、どんな漫画?

ご存知ない皆さんのために(自身の備忘録としても…)、文化賞サイト掲載の作品紹介と、先生の受賞コメントの一部をはっておきます。

◆ 「夜廻り猫」ストーリー ◆
涙の匂いをたどってやってくる『夜廻り猫』こと遠藤平蔵。傷つき涙する者を励ますために毎夜、現れる。遠藤と共に夜廻りをする子猫の重郎や彼らを見守る片目の猫・ニイなど個性豊かなキャラクターたちが今夜もあなたとともに涙します。

◆ 深谷かほる先生受賞コメント(抜粋) ◆
「『夜廻り猫』は依頼もなく、ただ描きたくて描いた漫画でツイッターにアップしていたのです。それが、手塚治虫文化賞。本当かなあ? 今も九割方、信じられてません。」

ニュースサイト「withnews」の記事

『「死ぬな」って言葉、地獄分かってない 夜廻り猫が描くしんどい学校』

で読ませて頂いたのは「いじめ」を取り上げた作品。

小学校時代の古傷に触れられるようで、アラフィフになっても響く…

 

今まさに死のうとしている女子高生。

それを引き留めようとする夜廻り猫の「遠藤」。

遠藤の一言から生まれた、数年後の驚きの結末。

他の作品も読ませて頂いて、

夜廻り猫遠藤に貫かれているスタンスは『共感』

ではないだろうか、と勝手に解釈しているんです。

 

隣に座ってそっと背中に手(前足)を置く…

後ろから「頑張れ」と声をかける…

 

「夜廻り猫」が描き出した『共感』の中身

人は、人に共感してもらえると、

「自分の存在を認めてもらえた!」

という承認欲求(他者承認)が一時的に満たされます。

傾聴し共感することは精神的な支えになることもあるので、傾聴ボランティアやカウンセリングで一般的に用いられている手法の一つ。

この「共感」は大きく分けて2種類

一つは、他者の感じていることを自分の感覚として感じる感情的側面(情動的共感)、

もう一つは、相手の立場から見えるであろう状況を推測して分析する認知的側面(認知的共感)。

 

この共感力をはかるテストもあるそうで、その尺度は

他者の幸不幸に共感する気持ちを評価する「共感的配慮」

他者の立場に立って物事を自然に考えることができるかどうかを評価する「視点取得」

フィクションの人物に感情移入する傾向を評価する「空想」

他者の不幸な境遇を我が身に置き換えて恐怖を感じる傾向を評価する「個人的苦悩」

の4つ。

ウィキペディアより引用)

この4つの「共感の尺度」のうち「視点取得」のみが認知的共感だそうです。

 

先ほどご紹介した作品で、

死のうとする女子高生に遠藤がかけた最初の「それはつらい」は、

「情動的共感」からでた言葉、

女子高生の「「死ぬな」って言葉、地獄分かってない」の言葉に、

「黙って死んだら真実も闇に葬り去られる。何があったか書いてくれ。」

と頼む言葉は

「認知的共感」からでた言葉

のように感じられます。

その後の女子高生のように、筆者もカウンセリング時は「傾聴」と「メモ」を取り入れています。

カウンセリング時に感じる、安易な共感の危険性

カウンセリングをさせて頂いていて、いつも感じるのは、

情動的に共感するだけでは、相談者の悩みは解決されない

ということ。

解決したケースもないわけではないですが、本人の努力で解決に至っただけ。

カウンセラーの情動的共感のおかげではないと思うんです。

カウンセラーに、情動的に共感してもらえると、

「苦しみをわかってもらえた」

という他者承認の欲求が満たされます。

その場の満足度は高いんですが、何も解決していないのでしばらくすると悩みは元の状態にもどってしまう。

なので、またカウンセリングを受けたくなる…

エンドレスループにはまりこんでしまうこともある

と思うんです。

 

なので

筆者は「わかった」の一言は口に出しません

ご本人の悩みはあくまで当事者にしかわからない悩み。

他者が安易に「わかった」と言えば、作品の女子高生のような言葉が返ってくるだけです。

 

吐き出したい…

ほんの少しでも楽になるなら、聴いてもらいたい…

全部とまではいかないまでも、

吐き出せるものを吐き出してもらえるよう「聴く」こと、「メモする」ことに集中

します。

 

相談者がカウンセラーの話に耳を傾けても良いと思ってくれるようになった段階で初めて、

こちらからゆっくり、焦らず、お話をするようにしています。

 

なぜなら、夜廻り猫遠藤のように、

他者の立場に立った「視点」で、物事を自然に考えられる「認知的共感」がができて初めて、相談者の悩みの解決に役立ちそうなヒントをお伝えできるようになる

んじゃないか…と考えているからなんです。

 

とはいえ、相手のあることですから、口で言うほど簡単にはいかない…

人の心とは、本当に難しいものです。

 

『夜廻り猫』を読んで考えた、安易な『共感』の危険性 まとめ

遠藤みたいな魅力が自分自身にあったなら…

と思うこともありますが、

難しければ難しいほど挑戦しがいがあるんじゃないか、

「一隅を照らす」(天台宗開祖最澄『山家学生式』冒頭より)

人でありたい、

そんな思いで

日々皆さんと向き合うことに努めようとしている、

古しい若輩者なのです。

 
のびさん
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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