平成29年度から変わる、ある中学校の観点別評価方法
新潟市内の中学校が生徒さん向けに配布した平成29年度用資料と、東京都教育委員会、国立教育政策研究所の公開資料の記載をもとに「中学のある教科の学期の観点別評価の方法」について自作の表を使いながらご説明させて頂きました。
その資料をおかしくださった方から、
Ⅰ期の成績通知後に「今年度から通知表の観点別評価方法が変わります。」というお知らせが中学校から届いた
とのご連絡を頂きました。
そこで今回は、中学校の観点別評価方法の変更で何が変わるのか?この変更から見えてくることは何か?考えていきたいと思います。
※記事中のこの中学校からの「お知らせ」は、平成29年度資料です。
評価方法が継続されているかどうかにつきましては、通学されている各中学校にお問い合わせください。
変更の理由と中身
見せて頂いた「お知らせ」には、成績の出し方の変更理由を
「生徒指導要録、高校入試で使われる調査書などの公文書で使用される観点別評価方法はA~Cの3段階評価で統一されているので、当校の評価もそれらに準じ、事務手続き上の混乱、誤解等を防止するため」
としています。
つぎに変更の中身として
『通知表の各教科「評価の観点」のアルファベット評価方法「A°(Aまる)、A、B、C°(Cまる)、C」の5段階を、今年度から「A、B、C」の3段階に変更する』
としています。
●観点別評価の意味(=めやす) (配布資料から)
「A」:目標に対する実現状況が十分満足できると判断されるもの
「B」:目標に対する実現状況がおおむね満足できると判断されるもの
「C」:目標に対する実現状況が努力を要すると判断されるもの
※詳しくは、記事「中学校の評価と評定の関係 | 県内中学校の平成29年度生徒用資料から」で説明させて頂いております。
具体的な変更点 | 以前の表から
個人的には、影響の大きい変更の印象を受ける今回の変更ですが、「お知らせ」には、前述の簡単な説明のみで、具体的な変更点や変更方法の記載はありません。「わからないことは、学校に問い合わせてください。」の一文があるだけです。
そこで、以前のコラムで作成し、数ヶ月で変更となった2つの表を活用し、今回の変更をもう少し詳しく見ていきます。
はじめに、表の中の変わる部分を赤枠で表示してみました。
※元の表は、今回の新潟市内中学校の理科の評価評定方法を表にまとめたものです。
【 表1 】 「観点別評価の方法」の変更点
※転載をお控え頂き、ありがとうございます。
表1の赤枠からわかる変更のポイントは、
A°(Aまる)、C°(Cまる)、Dという評価(評価のめやすも含めて全て)が、なくなる。
評価対象の素点の配分が、5段階(または4段階)から3段階に変わる。
の2つにまとめられます。
【 表2 】 「観点別評価から評定を導き出す方法」の変更点
※転載をお控え頂き、ありがとうございます。
表2の赤枠からわかる変更のポイントは、
学期の成績を出すときの
①観点ごとの素点の計、②観点ごとの評価、③評価を点数に換算するときの点数配分の3つ全てが、
5段階評価から3段階評価に変わる。
ということになります。
変更から見えてくること
表が小さく見にくいかと思いますが、2つの表には青枠で囲っている部分があります。
青枠は、各観点の評価を出すための材料(=評価対象。授業やノート、ワークなど)に与えられた「素点」と、各観点の素点の合計です。
これまでは、5段階でしたので、素点も「5」(または4)で割り切れる数字になっています。
1つの観点に与えられた素点は40点ですので、4つの観点の素点合計は、
4観点 × 素点40点 = 160点満点
でした。
学校現場での、今回の変更の具体的な対応方法の1つは、
5段階の「A°、A」を3段階の「A」に、5段階の「B」を3段階の「B」に、5段階の「C°、C」を3段階の「C」にする。というもの。
こうすれば、観点ごとの素点合計は変えずに済みます。
この場合、1観点の素点合計の○点~○点が「A」、○点~○点が「B」、○点~○点が「C」の線引きがどうなるのか、大変気になるところです。
※現在の成績は、「相対評価」ではなく「絶対評価」ですので、「今期の理科の観点①は、クラス全員が「A」という結果も理論的にはありえます。
もう一つの方法は、
素点合計に調整を加えて、5段階を3段階に変えていく
というもの。
例えば、観点ごとの素点合計を 40点 → 30点 に、素点総合計を 160点 → 120点
この方法であれば、評価結果は、5段階の時と大きく変わることはないと考えられます。
この場合、評価方法に修正を加える必要が出てきますし、評価の元となる評価対象の素点の配分も、3段階評価に合わせて変更が加えられる可能性がでてきます。
どちらの方法で変更を加えたとしても、出てくる疑問は、
観点ごとに出された評価「A」、「B」、「C」を「最終的な5段階評定 = 通知表の成績」にする時に使う「点数換算」はどうなるのか?ということです。
今までは、5段階でしたので、「A°= 5 点」と単純に5点満点方式で点数化していましたが、
今後は3段階ですので「A = 3点」の3点満点方式で点数化するようになるのか?
もしくは、3点満点方式の場合、4観点 × 3点満点 = 12点満点 を5段階評定におきかえるとすると、
○点~○点が「5」になるのか?という点なのです。
成績への影響は?
この中学校から配布されたA4片面1枚の「お知らせ」には、具体的な変更内容の記載がないため、前の「見えてくること」で書いたことも推測でしかありませんが、いずれにしても、「各教科「評価の観点」の評価方法を5段階から3段階に変更」することが成績に与える影響は大きいと感じています。
お子さんひとりひとりの将来にかかわる大切な「成績」に関する変更。
本来ならば、前年度のうちに保護者会などを通して学校側から詳しい説明があってしかるべきではないかと感じますし、新年度がスタートした後、学期の成績が出る段で、「今年度の成績の出し方の変更」を「お知らせ」で連絡する学校側の対応には疑問を感じざるをえませんが、変化は変化として受け止め、放置せずに対処法を考えて行動に移すことが大切ではないかと感じています。
まずは、
自分の学校、お子さんの学校の成績の出し方について再度確認してみる。
成績の出し方に関する疑問点は、学校に直接問い合わせてみる。
成績の出し方が明確になれば
「何に力を入れれば学校の成績をアップさせることができるか」
が明確に見えてくるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、平成29年度、新潟市内中学校からⅠ期の成績通知後保護者に届いた「通知表の観点別評価方法変更のお知らせ」の変更の中身と、この変更で何が変わるのかを、以前作成した表をもとに見てきました。
この中学校は、このような変更がありましたので、「成績の決め方」について意識しやすい環境になりましたが、変更がない中学校の場合は自分の成績がどのように出されているかに対する意識もあいまいになりがちです。
「何をどう頑張ったらいいか、わからない…」という生徒さん
「いろいろ頑張っているのに、成績はぱっとしない…」というお子さん
2021(令和3)年度、新しい学習指導要領=中学校で教える内容や目標のめやす(基準)の完全実施を迎える前に、2019(令和元)年度の中学1年生から、新学習指導要領に変えるための準備期間(移行期)が始められています。
時間にゆとりがあるうちに、自分の学校の成績の出し方を学校資料で自分で確認してみる、わからないところは先生に直接確認してみることで、学校の成績をアップさせる自分なりの方法を見つけ出すきっかけになると考えます。
成績の出し方は学校ごとに少しずつ違いますから、「対岸の火事」と思わず、一度しっかり調べなおしてみてはいかがでしょう。
今回の「お知らせ」を快く見せて頂いた方に、この場をお借りして心から感謝するとともに、お読み頂いた皆さんの日ごろの疑問点の解消に少しでもお役にたてるところがありましたら幸いです。
今回も、お時間頂いて最後までご覧頂き、ありがとうございました。