大学入試改革を受けて、最近は「読解力アップ」をうたう学習塾もちらほら見かけるようになりました。
筆者の教室では開校当初からお子さんの読解力を引き出すことを学習支援の柱に日々、小中学生の塾生さん達のサポートに取り組んでいます。
筆者を含めた専任講師たちの教師時代の経験から、「読む力アップ」は、子どもたちの学力を底上げし、全教科の成績を引き上げるためにどうしても欠かせない取り組みと考えているからなんです。
そこで今回は、これまでの実践の中から、効果が高く、簡単に取り組める「読む力」を伸ばす3つのアプローチに、気をつけたい注意点も併せてご説明。
「読む力を伸ばしたい!」と悩んでいる小中学生の皆さん、保護者の皆さんに、少しでもお役に立てればとの想いから、実例も交えて、実際に効果の高い方法を厳選してご紹介していきます。
目次の見出しから、お読みになりたいところに移動していただけます。
目次【タップでジャンプ】
あらわになった、日本の子どもたちの「読解力低下」
日本の15歳の「読解力」、15位に後退
2019年12月3日、あるデータが公表されました。
原文は、リンクからご確認頂けますが、要約は次の通りです。
経済協力開発機構(OECD)は3日、世界79カ国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に2018年に行った学習到達度調査(PISA=ピサ)の結果を公表。 2018年6月~8月に実施され、日本全国の高校など183校の1年生(15才)約6,100人が参加したこの調査で 「読解力」が15位となり、前回2015年調査の8位から後退。「日本の15歳「読解力」15位に後退 デジタル活用進まず」(日本経済新聞社 2019/12/3 17:00)より引用
調査結果から浮き彫りになった日本の高校生の弱点は、
- 文章の中から必要な情報を探し出す問題
- 情報が正しいかを評価する問題
- 根拠を示して自分の考えを説明する問題
筆者たちの実感が、データとして裏付けられた形です。
そもそも「読解力」とは?
そもそも読解力とはどんな力を指すんでしょうか。
前述の調査を実施し、結果を取りまとめている文部科学省国立教育政策研究所の国際研究・協力部の資料
「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」では、「読解力」を、
「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、社会に参加するために、テキストを理解し、利用し、評価し、熟考し、これに取り組むこと」
と定義。
調査で測定する能力を、
読解力のベース「読む力」を磨いて、国語を稼ぎ頭にした塾生さん
ということは、文章を読んで理解する読解力の基になる「読む力」は不可欠と言えそうです。
この力を伸ばすには、やはり「読書」は多いにこしたことはないと思うのです。
大人になって日本語の文章が理解できないと、どんな仕事でもうまくいきませんし、なにより、理解できないばかりに、利用されてしまったり、騙されてしまうことだってあると思うのです。
でも、
読書がきっかけで、国語が稼ぎ頭になった塾生さん
筆者の教室にも、スポーツ大好き!「マンガは読む」けど、読書はすすんでしない塾生さんがいました。
成績は中くらい。文章を読み解く力が足りてなくて、他教科の成績アップの足かせに…
高校入試までに読む力をなんとか引き上げてあげたい、少しでも読書量を増やしてほしい、
と考えて、中2の春ころから、マンガの延長として、教室にある絵本をことあるごとにすすめました。
最初は興味なさそうにしていましたが、すすめられて根負けしたのか少しづつ読んでくれるようになり、たまにですが、感想も教えてくれるように。
中3の夏も終わり、部活も引退して受験勉強にとりくむ日々。
レンタルできる絵本も少なくなり、教室の児童書数冊も読み終えてくれたころ、
勉強の合間の気分転換にでもなれば、と星先生の作品集
を古書店で探してきて、
「ショートショートって言ってね、一つの物語は短い作品を集めたものだから、気分転換にいいと思うよ!」
と、すすめてみました。
絵本と児童書で読書に慣れてくれたろう、すんなりうけいれてくれるだろう、とおもいきや、ここでもはじめは興味なさそう…
動画サイトや動画SNSがお気に入り、おススメ動画を教えてくれるほどの塾生さん。
オッサン塾講師がすすめる中古の本なんて、普通に考えれば、興味わくわけないのです。
2回に1回くらいは、「今はいいです。」と、ハッキリ断られてました。
読んでくれた時に感想を聞いても、
「まあまあでしたね……」
と、のれんに腕押し状態。ただ、変化は感じていました。
国語の成績が少しずつ上がってきたのです。
いま、彼女は高校生。
進学した私立高校は、特進クラスがある学校。
特進クラス入りをすすめられたんですが、
「部活できないのは絶対イヤ!」
と、その下の進学クラスへ。
彼女の学年はそんな子が多かったようで、今のところ、定期テストでは毎回特進クラスより好結果をたたき出す
「特進越えの進学クラス」一員。
しかも、そのクラスで毎回10位以内、学年でもトップ20を下回ることはありません。
中でも国語は、得点の稼ぎ頭。
知表を見せてくれて、1年間の全教科評定平均はなんと4.9に!
最近になって教えてくれたんですが、
星先生の作品を「結末が予想できないから、おもしろい!」と、気に入ってくれていたそうで、借りた本はしっかり読んでいてくれたとのこと。
高校進学後、古文・漢文も含めて国語が稼ぎ頭になった原動力の1つは、あの読書?
そう思うのは、自画自賛過ぎでしょうか……
「読む力」を無理なく伸ばす3つのアプローチ
こんな経験から、
読書好きでない生徒さんに読書をすすめるとき気をつけたアプローチは、
- スモールステップ
- 無理強いしない
- あきらめない
の3点です。
アプローチその1 スモールステップ
個人的には、マンガ好きであれば、読む力を伸ばすのは難しくないと思います。
マンガも説明文や登場人物たちの会話は短文ではありますが文章ですし、文の意味がわからなければマンガの面白さも半減してしまいます。
絵から入るタイプのお子さんには、絵が多いものから少しずつ文章の多い本に、小さなステップで難易度を上げていく方法がおススメ。
絵本は、絵が多くてすぐ読み終わるものから、文章が多くて考えさせる内容のもの、中には大人向けのものまで幅広く出版されていますし、
図書館や図書室には必ず用意されているジャンルですから、スモールステップにはもってこい。
絵本が苦痛でなくなったら、文字の大きい児童書。
文字が小さく挿絵の少ない児童書からショートショートに代表される短編文学へ。
そして、挿絵や写真をふんだんに掲載している文学作品やルポルタージュへ。
スモールステップで、楽しみながらレベルアップできるように工夫。
苦手意識の克服は、アプローチを工夫すれば決して難しいことではないのです。
アプローチその2 無理強いしない
普段から、塾生さん達や保護者の皆様のご機嫌取りはしません(笑)。
ですが、すすめるタイミングには気をつかっています。
ブレイクタイムなどに、本をすすめても嫌な顔はしない、手に取ってみようとするようなら、貸し出ししていることを伝えます。
全く興味をしめさない、いやそうにするなら、すぐ話を切り替えてしつこくすすめることはありません。
タイミングをうまくつかめば、それまで本に興味を示さなかった子でも手に取ってくれるようになるのです。
アプローチその3 あきらめない
1度や2度、断られたからといって、読書をすすめることをやめたりはしません。
卒塾生たちの成功体験、失敗体験の事例を紹介し、
読む力のアップに読書が一役買うこと、
読む力がつくと、成績アップにつながること、
タイミングをみはからいつつ、繰返し伝えています。
「読む力は読解力アップのベースになる」
と信じていますし、
塾生さんひとりひとりの「読む力を引き上げてあげたい」と本気で考えています。
遠回りのようで、実は、一番確実な成績アップの原動力の一つになるからです。
「読む力」を伸ばす3つのアプローチ 注意点
ただ、この3つのアプローチには、注意点が1つ。
漢字の読み書きが普通レベルでできている生徒さんであることが、前提
になります。
たとえば、
中2段階で、小学校1~2年の漢字でつまづいているような生徒さん
(以前そんな塾生さんがいたのです…)の場合、
全く効果がないわけではありませんが、時間がかかりすぎてしまいますので、そういう生徒さんは、まず漢字の勉強から始める必要があるのです。
「読む力」を無理なく伸ばす3つのアプローチ まとめ
読む力のアップに欠かせない「読書」、
中学卒業までには身につかないかもしれません。
ですが、ご紹介した3つのアプローチがきっかけで読書の重要性に気づき、結果を出してくれている卒塾生さん達がいるのも事実です。
また、大学入試改革で導入される共通テストは、推薦入試、AO入試にも大きな影響を与えていて、
推薦・AO入試ですが、こちらも一般入試に比べて楽というわけではありません。読解力重視の流れは推薦・AO入試でも変わりません。「結局どうなる共通テスト~記述式廃止でもセンター試験から変わる8つのポイント」 大学ジャーナリスト石渡嶺司氏のコラムより引用(2019/12/17(火) 21:08ヤフーニュース)
と指摘されていて、保護者の皆さんの学生時代の入試とは大きく様変わりしています。
公立高教員だった筆者の経験からも、読解力不足の高校生が読解力を高めようと好きでもない読書に取り組むのは、大変な時間と労力がかかるものです。
できれば、小学生のうちからお話してきた3つのアプローチと注意点を参考に、まずは「読む力」のアップを意識して取り組まれてみてはいかがでしょうか。
参考として、司書という「本のプロ」の立場から、埼玉県の公立高校図書館の活性化に取り組んでおられる湯川康宏氏のユニークな取り組みも併せてご紹介させて頂きます。
伝説の高校図書館つくった名物司書「情報源は本じゃなくてもいい」 (withnews 2020.2.6)
読解力を鍛える近道“音読”につきましては、下記の記事をご参照ください。
読解力をさらに伸ばすトレーニング法につきましては、下記の記事をご参照ください。
スクールの特徴紹介につきましては、下記ページをご参照ください。